決算の要点(3行)
- 2026年3月期は売上高107.9億円(前期比+36.2%)、営業利益2.4億円(+73.5%)と、トップラインと営業段階の利益は過去最高を更新した。
- 一方、営業外収支が▲2.2億円に拡大し、経常利益は1,940万円、純利益は271万円。2期連続で純利益が数百万円にとどまり、営業利益率2.2%の事業で投資家への分配後に会社に残る利益はほぼゼロという構造が固定化しつつある。
- 特別損失として「前期損益修正損」978万円を計上。過年度の損益に帰属すべき損失が当期に取り込まれたことを意味し、仮に全額が2025年3月期に帰属していれば同期は税引前赤字だった計算になる。
2025年12月に取り上げたダーウィンアセットパートナーズの決算書分析に、2026年3月期の数値を追加して更新します。同社は不動産クラウドファンディング「DARWIN funding」を運営する不動産特定共同事業者で、開発型案件を多く組成しています。以下、損益計算書、貸借対照表、安全性指標の順に見ていきます。
※本記事は公開されている決算公告等をもとにした筆者の分析であり、特定のファンドへの投資を勧めるものでも、同社の経営を評価するものでもありません。計上科目の内容は開示されていないため、解釈には筆者の推定が含まれます。
1. 主要数値(2025年3月期 → 2026年3月期)
| 項目(百万円) | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,919 | 10,787 | +36.2% |
| 売上総利益(率) | 1,136(14.3%) | 1,480(13.7%) | +30.2%/▲0.6pt |
| 販売費及び一般管理費(率) | 997(12.6%) | 1,238(11.5%) | +24.2%/▲1.1pt |
| 営業利益(率) | 139(1.8%) | 241(2.2%) | +73.5% |
| 営業外収支 | ▲132 | ▲222 | ▲89 |
| 経常利益(率) | 6.6(0.1%) | 19.4(0.2%) | +12.8 |
| 特別損益 | ― | ▲9.8(前期損益修正損) | |
| 純利益 | 2.9 | 2.7 | ▲0.2 |
| 総資産 | 5,469 | 5,615 | +2.7% |
| 純資産 | 332 | 335 | +0.8% |
| 自己資本比率 | 6.1% | 6.0% | ▲0.1pt |
| 社会保険被保険者数 | 49名(2025年11月29日) | 56名(2026年6月2日) | +7名 |

2. 損益計算書 ― 営業利益は過去最高、しかし営業外で消える
売上高は4期で2.5倍になり、2026年3月期は初めて100億円を超えました。売上総利益率は13.7%と前期から0.6pt低下しましたが、販管費率が11.5%へ1.1pt改善したため、営業利益は2.4億円、営業利益率2.2%と5期で最高の水準です。増収に対して販管費の伸びを抑えたという点では、営業段階の採算は改善しています。
問題はその下です。営業外収支は▲2.2億円と前期の▲1.3億円から拡大し、営業利益の9割強を吸収しました。前回の分析でも触れたとおり、同社は2025年3月期から匿名組合出資者への分配金を販管費ではなく営業外費用に計上している形跡があり、営業外費用の大半はファンド投資家への分配金と支払利息で構成されていると推定されます。期末の預り金残高(約32億円)に対する営業外費用の比率は単純計算で約7%であり、クラウドファンディングの想定利回り水準と整合的です。
つまり同社の損益構造は、「事業で2.4億円の営業利益を生み、そのうち2.2億円を投資家に分配し、会社には0.2億円が残る」というものです。投資家の立場からは分配が優先されていることの裏返しでもありますが、会社に残る利益がこれだけ薄いと、売上総利益率が1pt動くだけで(売上108億円に対して約1億円の粗利変動)、経常段階は赤字に転落します。損益分岐点に対する余裕は、ほぼありません。
なお、税引前利益962万円に対して法人税等が691万円(負担率約72%)と高いのは、住民税均等割や損金不算入費用の影響と考えられ、利益水準の低さを示す副次的なサインです。
3. 「前期損益修正損」978万円の読み方
当期は特別損失として前期損益修正損978万円が計上されています。これは、本来は過去の事業年度に計上すべきだった費用や損失が、当期になって判明したため当期の特別損失として取り込んだものです。
会計基準上、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用する会社であれば過去の財務諸表を遡及して修正しますが、同基準の適用がない中小企業では、過年度の誤謬を当期の特別損益で処理するのが一般的です。したがって科目名そのものが不正を示すわけではありません。ただし、実務上は監査法人のレビューや税務調査を契機に発見・計上されることが多い科目であり、どの年度に帰属する何の損失かは開示されていません。
仮にこの978万円の全額が2025年3月期に帰属するものだったとすると、同期の税引前利益658万円は▲320万円となり、同期は税引前赤字だったことになります。あくまで仮定の計算ですが、2期連続で純利益が300万円前後という水準は、この程度の修正で容易に符号が変わる、ということは押さえておくべきです。
4. 貸借対照表 ― 立替金と未成工事支出金が膨らみ、販売用不動産は半減
| 項目(百万円) | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 総資産比 |
|---|---|---|---|
| 現預金 | 547 | 482 | 8.6% |
| 販売用不動産 | 1,164 | 534 | 9.5% |
| 立替金 | 2,607 | 2,644 | 47.1% |
| 未成工事支出金 | 614 | 1,282 | 22.8% |
| 預り金(流動) | 3,177 | 3,231 | 57.5% |
| 未成工事受入金 | 572 | 1,153 | 20.5% |
| 借入金(短期+長期) | 1,226 | 709 | 12.6% |
| 純資産 | 332 | 335 | 6.0% |
総資産56億円に対して純資産は3.3億円。資産側で目立つのは次の3点です。
- 立替金26.4億円(総資産の47%)。2023年3月期の2.5億円から2年で10倍に増え、高止まりしています。立替金は本来、一時的に他者のために支出した金銭を回収するまでの経過勘定です。これだけの規模で恒常化している場合、開発案件のSPCやファンドに対する工事費・取得費の立替、あるいは関係先への資金供与である可能性が考えられますが、相手先と回収条件は開示されていません。純資産3.3億円の会社にとって、回収可能性の評価が財務の健全性をほぼ決める金額です。
- 未成工事支出金12.8億円と未成工事受入金11.5億円。いずれも前期からほぼ倍増しており、建築請負(開発型案件の建設工事)が事業の柱になりつつあることを示します。受入金が支出金をやや下回っているため、工事の進行に対して入金が先行している状態ではなく、工事原価を自社資金または預り金で立て替えている形です。
- 販売用不動産は11.6億円から5.3億円へ半減。在庫の売却が進んだ(それが売上108億円を支えた)一方、保有在庫のサイズは縮小しています。次期の売上を支える仕入れが、立替金・未成工事支出金の形で別の勘定に移っていると見ることもできます。
負債側では預り金32.3億円が総資産の57.5%を占めます。匿名組合型の不動産特定共同事業では投資家の出資金は事業者の財産となり、倒産隔離はありません。したがってこの預り金は実質的に投資家からの資金調達であり、償還期日が来れば返済が必要な負債です。金融機関からの借入金は12.3億円から7.1億円へ減少しており、資金調達の軸が銀行借入から投資家出資へさらに移っています。
5. 安全性指標
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 自己資本比率 | 9.0% | 6.1% | 6.0% |
| D/Eレシオ(預り金を負債に含む) | 9.7倍 | 13.3倍 | 11.9倍 |
| ネットD/Eレシオ(同上) | 7.4倍 | 11.7倍 | 10.4倍 |
| D/Eレシオ(借入金のみ) | 2.8倍 | 3.7倍 | 2.1倍 |
| 流動比率 | 123.1% | 112.9% | 110.3% |
| ROA | 1.1% | 0.1% | 0.0% |
| ROE | 9.4% | 0.9% | 0.8% |
自己資本比率6.0%、預り金を含むD/Eレシオ11.9倍という数字は、投資家からの預り金で事業規模を拡大してきた不動産クラウドファンディング事業者に共通する姿です。預り金を除いて見れば自己資本比率は約14%、借入金のみのD/Eは2.1倍と、銀行与信の観点では極端な水準ではありません。しかし、純利益が年間数百万円では内部留保による自己資本の積み上がりは期待できず、総資産が増えるほど自己資本比率は低下し続けます。流動比率も4期連続で低下し110%まで来ました。
人員面では社会保険被保険者数が49名から56名へ増え、1人当たり売上高は約1.9億円です。販管費の伸び(+24%)はおおむね人員増で説明でき、組織の拡大は続いています。
6. 投資家として確認したい点
- 立替金26.4億円の相手先と回収条件。総資産の半分を占める経過勘定が何に対するものか。関係会社やファンド向けであれば、投資家の出資金が間接的にどこへ向かっているかに直結する。
- 前期損益修正損の内容と帰属年度。金額は小さいが、利益水準に対しては大きい。何が修正されたのかは、事業者の管理体制を測る材料になる。
- 劣後出資の原資。優先劣後構造の劣後部分を事業者が負担する場合、その資金が自己資本(3.3億円)から出ているのか、他のファンドの預り金や立替金で回っているのかで、劣後出資の実質的な保護力は変わる。
- 開発型案件の工事リスク。未成工事支出金が12.8億円まで膨らんでいる。建築費の上昇や工期遅延が、請負利益と販売価格の両方を圧迫する局面にある。
- 償還の出口。販売用不動産が半減した中で、運用中ファンドの償還原資がどの資産から出てくるか。2026年8月の不特法施行規則改正により、利害関係人への売却は鑑定評価額に相当する価格が求められるようになる(12月1日以後の契約から適用)。事業者買取で償還してきた案件があれば、その影響も見ておきたい。
おわりに
売上100億円超、営業利益過去最高という見出しだけを見れば順調な決算です。しかし、投資家への分配後に会社へ残る利益は271万円で、過年度修正ひとつで赤字に転じる薄さであることに変わりはありません。資産の半分を占める立替金と、倍増した未成工事支出金が、次の決算でどう回収・精算されるか。この事業者を見るうえでの焦点は、損益よりも貸借対照表の中身に移っています。
※数値はすべて決算公告等の開示値に基づく筆者の集計・計算です。科目の内容に関する記述は開示情報から合理的に推定したものであり、同社に確認したものではありません。
